節分や八十八夜といった雑節と比べると知名度が圧倒的に低いのが「半夏生」です。
今回はこの半夏生についてそもそも読み方はどうなっているのかから解説し、その由来や意味、タコなどの食べ物を食べるという風習があると言われているが、はたしてそれは本当なのかを調べて参ります。
はっきり言って知名度がかなり低い雑節なので、これから意味を覚えていこうという方は読み方や簡単な意味だけでも覚えていきましょう。
半夏生とはどんな日?読み方は?
半夏生とは半夏別名烏柄杓という薬草が生える時期を表す雑節の一つです。
雑節とは二十四節季や五節句などの暦日の設定と合わせて、季節感をよりつかみやすくするために設定された日本独自の暦日であり、今でもその名残が各所にあります。
特に有名なのが節分や八十八夜でしょう。
また、この半夏生の読み方は「はんげしょう」なので、ついでに読めるようになってください。
2023年の半夏生はいつ?
半夏生は天球上の天体の位置を表す黄道を基準とする黄道座標の黄径が100度にきたタイミングです。
2023年だと黄道座標の黄径が100度になるタイミングは7月2日なので、だいたいそのタイミングが半夏生とお考えください。
二十四節季のタイミングがどうなっているのかを明確に測定している日本の公的機関は国立天文台なので、そちらの情報を見るのが近道です。
元々は夏至から数えて11日目に当たる日という考え方だったのですが、今では黄径が100度になったときが優先されています。
地方によってはこの日だけでは無くこの日から5日間が半夏生としている所もありますので、期間という表現も正しいのです。
半夏生の意味や由来
雑節には節分・彼岸・社日・八十八夜・入梅・半夏生・土用・二百十日・二百二十日と色々ありますが、必ずすべての雑節には意味があります。
この半夏生とは二十四節季をより細かく初候・次候・末候と3つに別けた七十二項の夏至の末候にある半夏生(はんげしょうず)からきています。
夏至は黄径が90度にきたタイミングなので2023年だと6月21日になりますが、その末候となるとだいたい7月1日か2日からの5日間となるのです。
先ほど半夏生は5日かあると解説したのはこのように七十二項からきているものとなっています。
二十四節季というのは黄径が15度移動するごとに区切っているのですが、だいたい1日進むと1度進むようになっているので、一つの節季は約15日、七十二項で区切ると一つの候は約5日となります。
また、七十二項にある半夏生の由来は「半夏」の別名である「烏柄勺(からすびしゃく)」が生えそろえる時期からきていると言われております。
また半夏生の意味は七十二項に使われていた物を区切りとして雑節として設けられたものとなるのですが、それだけではどうしてそのように設けられたのかの意味がわかりません。
この意味がポイントで、昔はこの半夏生が「この日までに畑仕事を終える」目安だったのです。
そして残りの5日間は今で言うところの軽い夏休みのような扱いになっていて、休む地方もありました。
つまり、この半夏生とは農家にとっての畑仕事を終わらせる締め切り日のようなもので、カレンダーなどが常設されていない人達にとっても一つの指針として作られていた目安だったとお考えください。
また、この半夏生にはその日までに畑仕事を終わらせるという共通のルールはありますが、それ以外の休みとするかどうかや、決まったものを食べるといったルールは独自の進化をしており違いが現れる部分となっています。
地方によっては仕事を休ませる事を幼い頃から信じ込ませるためにハンゲという妖怪が徘徊するという逸話が作られており、妖怪がうろつくから畑仕事をするのはNGとなっているところもあります。
半夏生にタコを食べる理由は?
半夏生には様々な風習や文化があるのですが、その中でタコを食べるという風習が残っているところがあります。
食べ物に関する情報がぎっしりつまっているサイト「食育大辞典」ではこの半夏生の時期にタコを食べる風習があるのは関西とのことで、どうやら豊作を祈ってタコを食べるようです。
意味はタコの吸盤がくっついた足のように大地にしっかりと根を張った作物に育って欲しいという豊作祈願になります。
元々タコには夏場を乗り切るために役立つ栄養素のタウリンなども含まれているので、夏バテ予防もあるのでしょう。
基本的に豊作祈願にまつわる風習や伝承は非常に多く、それらにまつわる儀式などもたくさんありますので、こういったタコの話が出てきても不思議では無いでしょう。
タコ以外に半夏生に食べる食べ物は?その理由は?
タコ以外にも半夏生には食べる風習があるものも存在します。
それが鯖とうどんです。
半夏生がある時期に鯖を食べる地方では、この鯖を「半夏生鯖」と呼んでおり、焼いた鯖を1人1本家族全員が食べるという風習があります。
これは福井県大野市を中心とした地域に伝わるかなり独特の風習です。
由来については諸説ありますが、江戸時代に大量にとれた鯖を食べることを推奨する令状が大野藩の藩主から出されて、魚屋が半夏生の日に焼いた鯖を出したのが始まりと言われております。
旬の物ではありませんが、お魚なのでEPAやDHAは摂取できますしタンパク質の補給にもなりますので、決して無駄では無いでしょう。
「半夏生」という言葉の語源は?
半夏生という言葉は二十四節季をさらに細かくした七十二項にある「半夏生(はんげしょうず)」からそのままトレースしています。
時期もすべて一緒であり、そちらから持ってきている物なので七十二項を調べることもおすすめします。
この七十二項は中国発祥なので、内容も中国向けのものとなっているのですが、日本と中国では気候も気象も大きく異なりそのままの意味では理解できない部分も多々あります。
そのためそのズレをなくすために日本向けに一部改良された七十二項が存在しているのです。
そちらを見て季節をイメージすることが重要となります。
ちなみに、日本向けの七十二項における半夏生も本場中国の半夏生も「烏柄杓が生える」という意味となっています。
半夏生の時期に注意することは何?
半夏生で注意しなければいけないことは先に説明したように「この日までに畑仕事を終える」ことです。
また、ちょっとした伝説や風習があり半夏生の時期には毒が降ると言われており、井戸の蓋をする必要があるとかこの時期にとれる野菜は口にしてはいけないというお話もあります。
これは諸説ありますが、半夏という草に毒があるのでそのような考え方が広まったという説や、梅雨明けの時期にはカビが発生しやすく雑菌やカビによって疫病が広まってしまうことがあるからその注意喚起という説もあります。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
今回は半夏生について詳しく解説しました。
基本的に雑節は農家に関するものが圧倒的に多いので、雑節のお話になった場合は何らかの農業的な関わりがあると考えください。
今回紹介した半夏生もこの時期までに畑仕事をあらかた片付ける目安となっており、昔の人が一つの指針にしていることがよくわかります。
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