お彼岸は何をする日?由来は?
春と秋にはお彼岸があるということはおぼろげながら理解している人も多いでしょう。
しかし、この墓参りはいつからいつまでなのか、そもそもの由来や意味はどうなっているのか、この風習はどこからきたものなのかといった疑問は多々あるのではないでしょうか。
今回はこのようなお彼岸における良くわかっていない部分を徹底的に追及して、わかりやすく解説いたします。
お彼岸とは?
現代に伝わるお彼岸とは「浄土をしのぶ日」または「あの世にいる祖先をしのぶ日」となっており、お彼岸のタイミングで墓参りに行くのが一般的となっています。
これは日本独自の太陽信仰や平安時代の末法思想、古代中国から伝わった二十四節気などがいろいろと混じることで誕生した独特の考え方及び風習であり、中国でもないものとなっております。
お彼岸には何をするの?
ここでは昔のお彼岸ではなく、今現在伝わっているお彼岸について詳しく解説します。
今現在伝わっているお彼岸では、春分の日や秋分の日である彼岸の中日の前後に墓参りに行くのが一般的です。
ただし、特別な飾りつけをすることはほとんどありませんが、お墓に行ってお参りするのに最低限必要なもの、お墓に供える線香やお花や供物は持っていきましょう。
しかし、あまりにも汚れがひどかった場合はきちんと掃除する必要がありますので、雑巾やごみ袋といった清掃用具も持って行ったほうがいいです。
ただし、供物についての扱いや掃除についてのルールはそのお寺ごとに設けられていますので、必ず住職の方にルールを確認してから行動してください。
お彼岸の由来や意味
多くの方が最も疑問に思っているのが「そもそも彼岸って何なのか?」とか「なぜこのように墓参りするようになったのか?」といったことでしょう。
これはなかなかに深い歴史のお話が必要になるので、スラスラと答えられる人は稀です。
最初に答えを書くと、由来は仏教、意味は悟りを開くことが転じてご先祖様が行きつくところとなり、さらに転じてご先祖様にお祈りをささげる時期となります。
もっとかみ砕いて説明すると、このようにお墓参りをするようになったのは、平安時代に末法思想が広まったこと、二十四節気が伝わっていたこと、自然信仰があったこと、仏教の教えが伝わったことの4つが複雑に絡み合ってそのような行動が当たり前になったと考えてください。
まず一つ一つひも解いていきましょう。
まず仏教には専門用語の中に「般若波羅蜜多」という言葉があります。
これはサンスクリット語の「パーラミター(波羅蜜多)」からきているもので、簡単に記載すると「完成すること」になるのです。
この「パーラミター」の「完成する」という意味はいわゆる悟りの境地に到達するという意味がありますが、悟りに境地に至るための修行という意味もあります。
そしてこの言葉がやがて煩悩から脱して悟りの境地に至る彼岸という意味になり、反対に自分たち人間が住んでいる世界を此岸(しがん)と呼ぶのです。
やがてこの彼岸は苦しみから解放される世界、極楽浄土であるという考え方が広まり、そこにご先祖様を崇拝する日本独自の風習が結び付くようになると、ご先祖様は彼岸にいるという考え方が根付くようになって多くの方が彼岸に到達することを目標とするようになります。
そのため、仏教が広まった日本では仏教徒ではない人々でもお彼岸の時期になると西に向かってお祈りをささげるようになりました。
このように、もともとは悟りに至った方が到達する世界および修業が彼岸だったのですが、いつしかご先祖様がいる世界が彼岸という考え方にすり替わったのです。
この彼岸の考え方に平安時代に末法思想が広まったことと二十四節気が伝わっていたことと自然信仰が合致して今のようなお彼岸という考え方が誕生します。
まず古来より日本は自然を非常に大切にしており、山や海や大地そして太陽には神様がいるという考え方があります。
その中でも太陽をあがめる考え方は圧倒的に強く、太陽の化身である天照大神を祀るお祭りは今でも日本各地にあるのです。
その太陽が真東から登って真西に沈む春分や秋分は特別な日という考え方が出来上がります。
これがいつなのかというのは古代中国の暦の数え方である二十四節気で教えてくれているので、春分の日や秋分の日であることが昔からわかっていたのです。
その考え方と仏教の教えの一つである浄土教が結び付いて極楽浄土および彼岸は西のかなたにあるので、太陽が真東から真西に沈む春分の日や秋分の日は、真東にある我々の世界の此岸と彼岸が通じやすくなる日という教えを説きます。
ところが、平安時代になると政権を争う戦いがずっと続いたので人々は摩耗してしまい「1052年に仏の教えが消滅してしまう」という末法思想が一気に広まってしまいます。
その結果「現世である此岸ですくわれることがないのならばせめてあの世で行くことができる彼岸では極楽浄土に行きたい」という考えが一気に広まり、教えを広めていた浄土教が結び付いて爆発的に広がり春分の日や秋分の日に西に向かってお祈りをささげる風習が全国レベルに広まりました。
もともと、仏教では「中道」がベストという考え方があり、太陽が真東から真西に沈む春分の日や秋分の日は特別な日という考え方も当たり前だったのでしょう。
このような変化から「彼岸」という言葉が悟りを開くことという意味から、ご先祖様がいる極楽浄土に変わって、さらにご先祖様を供養すれば極楽浄土に自分もいけるようになる確率が上がる特別な期間と切り替わり、お墓参りをする習慣が全国レベルで広まったのです。
このように紆余曲折があってお墓参りをする習慣に行きついたのですが、この情報をしっかりと理解したうえでお彼岸とは何なのかを開設できる人は少ないでしょう。
お彼岸は年に2回!春のお彼岸・秋のお彼岸はいつからいつまで?
お彼岸は基本的に春分の日や秋分の日と絡んでいるので、まずはそれがいつなのかを理解する必要があります。
現代の二十四節気や雑節である彼岸がいつなのかを公表しているのは国立天文台なので、そちらから情報を引っ張ってきましょう。
春のお彼岸
2020年の春分の日は3月20日です。
そこから前後各3日を合わせた各7日間がお彼岸となりますので、3月17日から23日が春のお彼岸となります。
秋のお彼岸
2020年の秋分の日は9月22日です。
そこから前後各3日を合わせた各7日間がお彼岸となりますので、9月19日から25日が秋のお彼岸となります。
このように簡単に計算することができますので、春分の日と秋分の日がいつなのかをまずは暗記することからスタートしましょう。
春分の日と秋分の日は太陽の位置によって多少前後するので1日ぐらいずれますが、大きくずれることはありませんので一度暗記すればずっと役に立てることができるでしょう。
なぜお彼岸に墓参りをするの?
お彼岸の由来のところで詳しく解説したように、「彼岸」という言葉が悟りを開くことという意味がありました。
そこから変化してご先祖様がいる極楽浄土という意味が追加され、さらにご先祖様を供養すれば極楽浄土に自分もいけるようになる確率が上がる特別な期間と切り替わり、お墓参りをすることが当たり前の期間となりました。
今では極楽浄土に到達するとか解脱するという考え方よりも、シンプルにご先祖様を供養する日という考え方が残っているので、由来を知らないという人に聞くと高確率でご先祖様を供養する日という答えが来るでしょう。
お彼岸のお供え物は何?
お彼岸は説明したように太陽が真東から真西に沈む日、つまり春分の日と秋分の日と2回あります。
この春と秋のお彼岸の違いとは何なのかと問われた場合に出た答えが、お供え物でしょう。
春のお彼岸はぼた餅をお供えして、秋のお彼岸はおはぎをお供えします。
意味は非常にわかりやすく、牡丹が咲く季節だから春の彼岸で牡丹餅をお供えして、秋には萩の季節だからおはぎを食べるお供えするというものです。
おはぎはあずきの粒が秋に咲く萩に見立てることができるといういわれもあります。
もともと、小豆の赤色には厄除けの効果があり災難が発生しなくなるといわれているので、このようにぼた餅やおはぎがお供えになるというのも自然な流れなのでしょう。
ただし、お供えの風習は地方によって異なる部分もありますので、自分たちが住んでいる地域はどうなっているのかをまずは確認しましょう。
春や秋のお彼岸にお供えする花はどんな花を選べばいいの?
お彼岸でのお墓参りでは花を添えることが当たり前ですが、どの花を選べばいいのでしょうか。
基本的にルールがありますのでそのルールを確認しましょう。
まず選んでいけない花とはとげがある花、弦がある花、毒がある花です。
例えば、バラやアザミやスイートピーやクレマチスや彼岸花や水仙やスズランはアウトです。
推奨される花はこれらの選んではいけない花を除外して、明るく鮮やかな花が好まれます。
ただし、故人がなくなってすぐのお彼岸の場合は派手すぎる色は嫌われますので、淡い色や白がいいでしょう。
そのような縛りがなければ白や赤や黄色や紫色の花がお彼岸では好まれて使われるようになっております。
基本的にお彼岸向けの花というのは時期を見計らって売られていますので、そちらを店員から購入すれば問題ないでしょう。
お彼岸法要・彼岸供養・彼岸会でのお布施の相場は?
お彼岸法要と彼岸供養と彼岸会でのお布施の相場は地方やお寺によって異なりますので、明確な数字を出すことができません。
一例として記載すると、お寺が開催するお彼岸法要だとお布施は3,000円~1万円程度となりますが、お寺によっては1万円を簡単に超えてくることがありますのではっきりと言えないのです。
ただし、これが個別でお願いする形の法要となった場合はお寺が開催するような法要とは違って格段に相場が上昇し、3万~5万円程度は必要になるでしょう。
お寺によっては5万円をはるかに超えて10万円に到達するケースもあります。
また、自宅に僧侶を招いての法要供養を行う場合でも個別でお願いする形の法要と一緒で相場はだいたい3万~5万円となりますが、自宅に招く必要がありますのでお車代が別途必要になります。
なので、この金額に追加で5,000円程度は必要になるでしょう。
このように金額にかなりの差がありますので、ネットでの情報のみに頼らないで周りの人たちに確認したほうがいいでしょう。
お布施の「のし」の表書きはなんて書けばいいの?
御布施ののしの表書きは慣れていない人にとってどのように記載したらいいのかわからないでしょう。
基本的に御布施目的で使う場合は「御布施」「お布施」と記載すればいいでしょう。
それ以外には「御経料」「御礼」「御回向料」といった書き方もあります。
この記載の下に「○○家」と施主の姓を記載するか施主の氏名を記載してください。
また、お布施を入れる封筒にも選び方がありますので、むやみやたらに選ばないほうがいいでしょう。
基本的にはお布施を入れる袋はのし袋ではありませんでした。
半紙の中包みに入れて奉書紙で包むという形だったのですが、奉書紙を使うというやり方は一般的ではなくほとんどこの形でお布施をすることはなくなっているので、気にする必要はないでしょう。
ちなみに、最も丁寧な形は先ほど記載したように半紙の中包みに入れて奉書紙で包んで、水引をかけない形となっております。
基本はコンビニや文房具店で市販されているお布施と印字された袋を活用すればいいでしょう。
このように印字された袋ならばこの記載の下に「○○家」と施主の姓を記載するか施主の氏名を記載すれば終わりとなります。
御布施と記載されたものがない場合は白い封筒に先ほど記載したように「御布施」「お布施」と記載して、この記載の下に「○○家」と施主の姓を記載するか施主の氏名を記載してください。
ただし、「不祝儀袋」を使う場合は水引きは結び切りのものじゃないといけないので、お布施用の封筒を用意したほうがわかりやすいでしょう。
また、一部地域ではこのようにお彼岸のお布施袋のルールが別途あったりしますので、お彼岸のルールがどうなっているのかを先に確認したほうがいいです。
お布施の裏側には基本的に名前を表に書いてあるのならば何も書く必要はありません。
袋に住所氏名を書くケースも確かにありますが、それは「中包み」を用意して「外包み」で包むようなケースですので、今ではほとんどないでしょう。
この「中包み」を用意して「外包み」を用意した場合は、中包に住所や名前を書くことがあります。
ただし、この書き方にも地方独自のルールが存在するケースもあるので要注意です。
具体的には、白封筒の表側に「◯◯家」と施主の姓を記載した後に、裏面に住所と氏名や金額を記載するというやり方です。
この金額を書くという風習も地方によってあったりなかったりするのですが、基本的には書く必要はないと考えたほうがいいでしょう。
ごく一部の金額を記載する地域では、裏面の左側に住所と氏名を記載して、金額は右側に縦書きで記載してください。
この金額についてもアラビア数字は使えないという意見もあったのですが、普通に使うケースも増えているので、書き方について周りに合わせる程度の考え方でいいでしょう。
それでも数字の改ざんを防ぎたいという考え方がある場合は壱萬といった書き方をするといいでしょう。
お彼岸とお盆の違いは何?
お彼岸とお盆についての違いが良くわからないという人も多いでしょう。
しかし、今回紹介したようにお彼岸の意味を理解すれば違いも理解しやすくなります。
お彼岸とは基本的に彼岸とつながっている期間であり、ご先祖様がいるお彼岸へのお祈りが届きやすい期間といわれていますので、自ら足を墓に運んでご先祖様の供養をする日です。
しかし、お盆というのは8月13日から16日にまである、迎え火を焚いてお迎えしてご先祖様が一時的に家に帰ってくる期間で、供養した後に送り火を焚いてあの世へ送り出す日となります。
お盆の場合はご先祖様が乗るためにキュウリとナスを使った精霊馬を用意するなどのルールがありますが、お彼岸ではお盆のように決まった儀式はありません。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
今回はお彼岸について詳しく解説いたしました。
お彼岸はこのように由来や意味をたどってみると、悟りを開き完成された人間がたどり着く境地の事だったのに、いつの間にか極楽浄土が存在する世界という考え方に切り替わって、自分たちも将来いくためにお祈りする習慣となりました。
このような変化の仕方を見ると、いかに昔の人たちが本気で祈っていたのかが良くわかります。
この知識はいろいろと小ネタに使える知識と言えますので、是非とも活用してください。
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